はじめに:AI外観検査の成功は「学習データ」で決まる
AI外観検査を導入したが、「想定していたほど精度が出ない」「NG品を見逃す」といった声を耳にすることがあります。
その原因の多くは、学習データの質と量に課題があることに起因しています。

本記事では、AI外観検査に必要な学習データの収集・整備・運用のコツを分かりやすく解説します!


AI外観検査における「学習データ」とは?
●画像がAIの教科書になる
AI外観検査において「学習データ」とは、製品の正常品・不良品の画像データです。
このデータをAIに与えることで、外観上の異常や欠陥を識別する判断基準を学ばせることができます。
●教師あり学習と教師なし学習
- 教師あり学習:正常/異常をラベル付け。高精度だがデータ整備が手間。
- 教師なし学習:正常データのみで異常を検知。ラベル不要だが、誤検出のリスクがある。



検査対象やコスト、リソースに応じて最適な手法
を選びましょう。


学習データ収集のコツ
●データは「量よりバランス」
AIに必要なのは「大量のデータ」ではなく、「現場のばらつきをカバーする多様なデータ」です。
- 正常品のバリエーション(照明さ、角度、ロット違い)
- 異常品の種類ごとの画像(傷、異物、寸法ずれなど)
また、データを集めるときは、必ず実際に使う現場のカメラや照明で撮影しましょう。
開発時と現場で撮影条件が違うとAIの精度が下がることがあります。
●不良品データの確保が最難関
実際の量産現場では、不良品の発生頻度が低く、「学習に使える異常画像が少ない」という課題があります。
ここでは、シミュレーション画像や過去の検査ログの活用も視野にいれましょう。
もし、不良品がなかなか集まらない場合は、過去の検査記録から画像を探したり、
意図的に不良品を作って写真を撮る方法もあります。
これにより、AIに必要な異常データを増やすことができます。


学習データ整備のポイント
●アノテーション(ラベル付け)は正確に
AIの性能に直結するのが「正しいラベル付け」です。ポイントは以下です。
- 作業者によるバラツキを防ぐためにルール化する
- 異常箇所の範囲を明示(矩形、マスクなど)
- 自動アノテーションツールの活用も検討


●ノイズや不要な要素は排除する
学習データには、照明の映り込みや背景ノイズなど不要な情報が含まれていることがあります。
こうした要素はAIモデルの誤学習の原因となります。そのため、事前に画像をクリーニングしておきましょう。
例えば、背景に他の部品が映っていたり、照明が強すぎて白くなっている部分があれば、画像を編集したり、
撮影環境を見直して、余計な情報を減らしましょう。
データ運用で気を付けるべき事
●学習は一度きりでは終わらない
現場環境の変化や製品仕様の微調整により、AIモデルの精度は時間とともに低下することがあります。
定期的に新しいデータで再学習を行う。いわゆる運用フェーズでの”継続学習”が必要です。
●データモデルは「分けて管理」
AIの精度改善や再学習のたびに、学習データとモデルのバージョン管理が重要になります。
データ基盤やMLOps(エムエルオプス)の考え方も製造業において徐々に普及しています。
データやモデルの管理には、専用のソフトやクラウドサービス(例えば、DataRobot・Google Vertex AI)を使うと、再学習やバージョン管理が簡単になります。


実務でつまずきがちなポイントとは?
実際の導入現場では、以下のような課題が頻出します。
- 不良データが集まらずPoCが進まない
- アノテーションの品質がばらばら
- 「正常データだけ」では精度が安定しない
- 本番環境では照明やカメラの条件が異なる
こうした課題に対応するためには、AI開発のノウハウだけでなく、現場とのすり合わせ力も求められます。
特に、本番の現場でカメラや照明の条件が違う場合は、現場で新しく画像を集めたり追加でAIを学習さえることが大切です。



開発チームと現場担当者がよく話し合うことが成功のポイントです。
まとめ:AI外観検査の精度は「学習データの質」で決まる
AI外観検査の成功には、精度の高いモデル開発だけでなく、土台となる学習データの質と運用体制が重要です。
本記事で紹介したポイントを振り返ると
- 学習データは多様性とラベル制度がカギ
- 不良品データの確保には工夫が必要
- アノテーションや画像ノイズの処理も重要
- 運用後の再学習とデータ管理体制が求められる
データ収集や整備は一見、単純作業に見えますが、実はAIの精度に直結する繊細な工程です。
だからこそ、実務と現場の両方に精通したパートナー選びが成果に大きく影響します。
現場の協力とデータ管理の仕組みづくりが、最終的な品質やコスト削減にもつながります。



地道なデータづくりが、AI外観検査の成功のカギです


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