はじめに
近年、エッジAIの需要が高まる中で、Google Coralシリーズは、高速なAI推論を可能にするエッジデバイスとして注目されています。
従来、AIモデルの推論はGPUやクラウド上で行われることが一般的でしたが、Google Coralは独自のTPU(Tensor Processing Unit)を搭載することで、エッジデバイス上での高効率な推論を実現します。
これにより、クラウドへの依存を減らし、リアルタイム処理やプライバシー保護、低遅延なAIアプリケーションを実現できるのが大きな特徴です。

本記事では、Google Coral の基本概念、特徴、活用事例、導入ポイントについて解説します!
1.Google Coralとは?
Google Coralは、エッジAI向けに設計されたハードウェアシリーズであり、
特にTPUを搭載していることが大きな特徴です。
Googleが開発したこのEdge TPUは、AIモデルの推論処理を高速かつ省電力で実行できるため、
リアルタイムAI処理が求められるエッジデバイスに最適です。
Coralシリーズの主な特徴
●Coral Dev Board
シングルボードコンピュータで、エッジAIアプリケーションの開発に最適。
AIを活用したスマートホームシステムのプロトタイピングやロボットの視覚システム開発などに広く利用される。
●Coral USB Accelerator
USB経由で接続し、既存のPCやラズパイにAI推論機能を追加可能。
ラズパイと組み合わせて、低コストで高性能なAIカメラシステムを構築可能。
●Coral PCle Accelerator
PCleスロットに挿して使用できる強力な推論デバイス。
産業用PCに組み込んで、工場の品質管理システムなどに活用できる。
●Coral SOM(System-on-Module)
組み込みシステム向けの小型モジュール。
カスタム設計の組み込みデバイスに最適で、医療機器やロボット制御などに利用可能。



これらの製品を活用することで、クラウドに依存せずにエッジデバイス単体でAI推論が可能になります。
2.Google Coralの主な特徴
Google Coralシリーズには、以下のような特徴があります。
高速な推論処理
Coralシリーズに搭載されているEdge TPUは、従来のCPUやGPUよりも
低い消費電力で高効率なAI推論を可能にします。
例えば、画像認識タスクでは、従来のCPUよりも数十倍のスピードで処理が可能です。
Coral USB Acceleratorを使用した場合、MobileNet V2モデルでの画像分類タスクにおいて、
1秒間に400フレーム以上の処理が可能です。
省電力設定
Google Coralはエネルギー効率が高く、消費電力が少ないため、
バッテリー駆動のIoTデバイスや小型ロボットに最適です。
TensorFlow Lite対応
TensorFlow Lite向けに最適化されているため、すでにTensorFlowを利用したモデルを
スムーズにエッジ環境へ移行できます。
小型で組み込みやすい
Coralシリーズは、小型デバイス向けに設計されており、ドローン、監視カメラ、
産業用センサーなどへの組み込みが容易です。
Googleのエコシステムとの連携
Googleのクラウドサービス(Goole Cloud,TensorFlow)とスムーズに連携でき、
エッジとクラウドを融合したシステム構築が可能です。
開発のしやすさ
Google Coralは、豊富なサンプルコードとドキュメントを提供しており、
初心者でも短期間でエッジAIアプリケーションの開発を始められます。
Python APIを使用して、わずか数行のコードでAIモデルを実行できます。
3.Google Coralの活用事例
Google Coralシリーズはさまざまな分野で活用されています。
スマートカメラ
監視カメラや交通モニタリングシステムにおいて、リアルタイムで物体検出・顔人仕様を
行う用途で活用されています。
農業・環境モニタリング
農作物の成長監視や、野生動物の検出など、ドローンやセンサーデバイスと組み合わせて
環境データを解析する用途に活用されています。
海洋研究
無人水上車両にCoral技術を活用し、化学、漁業、気象予報、海洋地図作成などの
データ収集に活用されています。
これにより、人間が直接アクセスしにくい海域でのデータ収集が可能になっています。
4.Google Coral活用のポイント
1.適切なデバイスを選択
プロジェクトの用途に応じて、開発用(Dev Board)、USB接続(USB Accelerator)、
組み込み用途(SOM)など適切なデバイスを選びましょう。
2.TensorFlow Liteの準備
TensorFlow ModelをTensorFlow Liteに変換する際は、TensorFlow Converterを使用します。
また、Edge TPU Compilerを使用してモデルを最適化することで、さらなる性能向上が期待できます。
具体的には、量子化技術を使用してモデルサイズを縮小し、推論速度を最大3倍に向上させることが可能です。
3.電力要件を確認
バッテリー駆動で利用する場合、消費電力と供給電力(USB,DC電源など)を考慮し、
適切な設計を行いましょう。
4.ハードウェアの組み込み
センサーやカメラとの接続が必要な場合、適応するインターフェース
(GPIO、I2C、USB、PCIeなど)を事前に確認しておくことが重要です。
5.セキュリティ対策
エッジデバイスは物理的なアクセスが容易なため、データの暗号化やセキュアブート機能の活用など、
適切なセキュリティ対策を講じることが重要です。
Coral Dev Boardは、ハードウェアレベルの暗号化機能を備えており、
センシティブなデータを保護することができます。
まとめ
Google Coralシリーズは、高速な推論処理、省電力設計、TensorFlow Liteとの互換性といった特性を持ち、
エッジAIの分野で幅広く活用されています。
監視カメラ、農業モニタリングなど多くの分野で実績があり、クラウドに依存しない
AI推論が求められる場面で大きな力を発揮します。
導入を検討する際は、用途に適したデバイスの選定、TensorFlow Liteの準備、電源、
インターフェースの確認を行い、最適なAI環境を構築しましょう。
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